1000mTT、スタートの直前。
緊張で体の力が全く入らない。
こんな経験はありませんか? 私はよくあります。
「自分はメンタルが弱いせいだ」と思ったこともあるかもしれません。
しかし、この現象はメンタルの弱さが原因ではありません。
スポーツ心理学や脳科学の観点から見ると、これは極めて正常な「脳の防衛本能」です。
1000mTTは、人間が経験するスポーツ競技の中でもトップクラスに苦痛(筋肉の急激な酸性化と極度の酸欠)を伴う種目です。
脳はその先の「地獄の苦しみ」を過去の経験から予測しているため、スタート直前に「全力を出すと身体が破壊される」と判断し、無意識のうちに神経系にリミッター(ブレーキ)をかけてしまいます。
これはスポーツ科学において「セントラル・ガバナー理論」と呼ばれる出力抑制のメカニズムです。
この記事を読むことで、「無意識のブレーキを外し、発走機から鍛え上げたパワーを100%爆発させるための科学的なメンタル・コントロール術を身につけること」ができるようになります。
脳を騙す「チャンキング(分割)」の極意
脳が「これから1000m(約1分10秒)もがく」と認識している限り、恐怖によるブレーキは外れません。
なぜなら、走り終えた後、あるいは走っている中盤から尋常じゃない拷問級の苦痛が来ることを、我々の脳は知ってしまっているからです。
そこで、「発走から最初の200mのタイム計測だ」と強烈に思い込むようにします。
声に出して呟いてみるのも効果的です。
脳は「200mだけなら全力で筋肉を動かしても安全だ」と判断するため、動員される筋繊維の数が最大化され、トップスピードまで一気に引き上げる爆発力が解放されます。
騙されたと思って次回の1000mTTで「これは200mのタイム計測」と呟いてみましょう!
脳は意外に騙されやすいです。
悲しいときでも笑顔を無理やり作ると楽しい気分になる的なアレです。
「逃走モード」から「闘争モード」へ強制移行
力が抜けてしまうのは、極度のプレッシャーで自律神経が「逃避モード」に入っている状態です。
これを強制的に「闘争モード(交感神経優位)」へ切り替えるスイッチがあります。
アイソメトリック収縮(等尺性収縮)の利用
発走機にセットされ、カウントダウンが始まる「前」の段階で、ハンドルを強く握り込み、広背筋と腹圧に「グッ」と一瞬だけ強い力を入れます(筋肉の長さを変えずに力を入れる)。
これにより、脳から筋肉への神経伝達が強制的に開通し、力が抜けるのを防ぎます。
「これから強い刺激が入るぞ」という脳への準備運動です。
短く鋭い呼気
深呼吸をしてリラックスしようとするのは逆効果です。
リラックスした状態で爆発的な力は出ません。
「フッ!フッ!」と短く鋭く息を吐くことで交感神経を刺激し、心拍数を意図的に戦闘状態へ持っていきます。
視覚情報の遮断(フォーカル・ポイント)
スタートラインで広いバンク全体を見てしまうと、「この距離を走るのか」という絶望感が脳のブレーキを強めます。
経験ありませんか?
1000mの前にバンクを全体を見てしまい、「バンク広くね?これ2周半も走るの?」と絶望したことが。
視覚情報を極限まで狭めることで、先の展開に対する不安(予期不安)を物理的に遮断します。
ただし、視界を狭めたいからといって「フロントタイヤのすぐ先」など下を向いてしまうのはNGです。
下を向くと背中が丸まり、ペダルに体重を乗せるための上半身の剛性が失われてしまいます。
正解は、「第1コーナーの入り口の『一点』だけを鋭く見据えること」です。
バンク全体は見ず、コーナーの入り口(ラインの傷など)に完全に視線を固定してください。
胸を張り、首を伸ばした状態でその一点を睨みつけることで、パワーを逃がさない姿勢を保ちながら、脳の集中力を極限まで高めることができます。
まとめ
スタート前の「体の抜け」は、あなたの脳が正常に機能している証拠です。
特にチャンキング(分割)は効果的だったので、みなさんもぜひ試してみてください。
今回は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。


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