こんにちは!にいやんです!
自転車競技において、「ゼロ発進のスタンディングスタート」や、「トップスピードでもがく瞬間」、あなたは「ハンドルを引く力」を100%ペダルに伝えられているでしょうか?
強大なトルクが発生した瞬間、高負荷に耐えきれずに**「背中が丸まってしまう」**というエラー動作に悩む選手は少なくありません。腕で引いた力と脚で踏む力を繋ぐ「背中(ポステリア・チェーン)」がたわんでしまえば、いくら脚力があっても、その出力は推進力に変わりません。
また、ハンドルを引く力に体幹が負けて体が捩れたり、腕だけで引いてしまったりする人もいるかもしれませんね。
高剛性で反応の早いカーボンフレームであれ、特有の「しなり」と反発を持つクロモリフレームであれ、力を受け止めるライダーの体幹がたわんでしまっては、フレームの特性を活かしきる前にエネルギーが散逸してしまうのです。
今回は、この「背中の丸まり」や「体幹の捩れ」を物理的に防ぎ、爆発的なパワーを自転車に叩き込むための最強のウエイトトレーニング種目**「ペンドレイロウ(Pendlay Row)」**の特徴と技術解説をご紹介します。
「ペンドレイロウ」とは

バーベルを床に置いた状態から、上半身を床と平行になるぐらい倒した姿勢を維持しながら、バーベルを引き上げる種目です。
「ペンドレイロウ」をやる目的
ハンドルを引く力を強化する
発走機やホルダー発走のようなゼロからのスタート、または低速からのダッシュのような場面でハンドルを強く引いて加速できるようにするのが狙いです。
また、単にハンドルを引く力を強化するだけではなく、瞬発的な力も強化できるので、重いものを引くだけではなく、「より速く力」を強化します。
ハンドルを引いたときに体幹が負けないようにする
ハンドルを引く力に体幹が負けると、せっかく生み出し力は逃げ、自転車が進む力になりません。
ペンドレイローでは、体幹(腹圧)も鍛えることができます。
浮き上がってくる脚を背中で押さえつけられるようにする
バーベルを引き上げる際に、胸椎を伸展させ、地面に向かって押しつけるようにすることでより広背筋を強く使うことができるのですが、この動作が自転車で上半身を固めるときの能力につながる感覚あります。
また、脊柱起立筋なども鍛えられ、背中で押さえ込む力も強化できます。
なぜ「ベントオーバーロー」ではなく「ペンドレイロウ」なのか?
背中のトレーニングといえばベントオーバーローが一般的ですが、自転車競技のスプリント力向上においては、床から毎レップ引き上げる「ペンドレイロウ」が圧倒的に理にかなっています。
その科学的根拠は以下の4点です。
伸張反射の排除と純粋な最大筋力の向上
ベントオーバーローは筋肉のバネ(伸張反射)を使いやすい性質があります。ようは反動を使ったチーティングです。ペンドレイロウは毎レップ床に置いてテンションをゼロにする(デッドストップ)種目です。これにより、純粋な自らの筋収縮のみでバーを引き上げるため、広背筋の絶対的なパワー向上に直結します。
上半身の角度がより自転車の乗車時に近い
ベントオーバーローは、地面に対して上半身が平行とまではいきません。やや上半身が起きます。ペンドレイロウは、上半身がほぼ平行になり、より自転車に乗っているときと近いフォームでトレーニングを行うことができます。
ネガティブ動作でかかる筋肉のブレーキを防げる
ベントオーバーローは、バーベルを引き上げたら、床まで下ろさずに耐えます。その耐える動作は、引く動作のブレーキになります。ペンドレイロウは、バーベルを床に戻すのでブレーキ動作に筋力を割く無駄がなくなります。
極限のRFD(力の立ち上がり率)の獲得
ゼロ速度(静止状態)から一気に最大出力を立ち上げる神経系の発火能力が鍛えられます。これはまさに、ゼロ発進から爆発的に加速するスタンディングスタートの動作そのものです。
自転車競技のためのペンドレイロウ・技術解説
単に高重量を挙げればいいというわけではありません。バーベルの軌道は、「自転車に必要な能力を鍛える」ということを意識することが大切です。
1. セットアップ:強固な「胸椎伸展」の構築
床に置いたバーベルに対し、腰幅で立ち、股関節を深く折りたたみます。ようはデッドリフトのときのようなヒンジ動作です。
上半身は床とほぼ平行です。
ここで脊柱起立筋を総動員して背骨を一直線にロックし、強固な**「胸椎の伸展」**を作ります。
また、腹圧も意識して入れてください。腹圧を入れないと腕だけでバーベルを引くことになります。自転車に乗ったときも、腕だけでハンドルを引くことになります。
この開始姿勢は、自転車に乗っているときの上半身のフォームを意識しています。
少しでも体幹のテンションが抜ければ、それは「背中を丸める癖を強化する練習」になりますので注意してください。
2. グリップ幅:肩幅より「やや広め」の力学
グリップ幅が狭すぎると、引き切った時に肩関節が内旋し、胸椎の屈曲(背中の丸まり)を誘発してしまいます。
肩幅よりも拳1〜1.5個分広めのオーバーハンドグリップを握ることで、肩甲骨の強固な内転・下制(寄せて下げる動き)を強制的に作り出すことができます。
3. バーの軌道:下部肋骨への強烈なベクトル
バーを胸に向かって引くと肩がすくんでしまいます。
肩がすくむと僧帽筋などに刺激が入ってしまい、本来刺激を入れたい広背筋を使いづらくなってしまいます。
バーの軌道は、床から「みぞおち〜下部肋骨」に向かって引きます。
バーを引くときのイメージとしては、「ドロップハンドルを身体の重心(BB付近)に向かって爆発的な勢いで引きつける感じ」を持ちましょう。
【実践編】推奨される重量・回数設定とその科学的根拠
トラックレーサーが爆発的な出力を目指す場合、以下の設定をおすすめします。
- 推奨設定: 3〜5セット × 4〜6回
- 重量の目安: 1RM(1回ギリギリ挙げられる重量)の75〜85%
※1回ギリギリ上げられる重量とは、反動(チーティング)を使わずに正しいフォームで上げられる最大重量です。
初めての人は、10回以上できる軽い重量で練習してみて、どのぐらいの重量であれば4〜6回ぐらいになるかを感じてみましょう。
【なぜこの設定なのか?(科学的根拠)】
筋肥大ではなく「神経系の発達」を狙うため
自転車競技において、無駄な体重増加(使えない筋肉の増加)は大きなマイナスになる可能性があります。
100歩譲ってカーボンフレームなら体重もプラスになりますが、クロモリフレームであればマイナスの影響が高くなると思います。
8〜12回という一般的な筋肥大のレンジではなく、4〜6回の低回数・高重量で速筋繊維(タイプIIx)に強い刺激を入れることで、体重を増やさずに「純粋な出力」だけを最大限に引き上げることができます。
筋肉量が多ければ最大筋力の上限も上がるというのも事実なので筋肥大を狙うという考えも理解できます。
ただ、筋肥大を目的とするなら、ペンドレイローよりも優れた種目があります。
私なら、自転車に合わせて下から引くことにこだわるのであれば、ダンベルロー。こだわらなければ、プーリーロー、ロウロー、アイソラテラルローなどのマシン種目も使います。というか、使っています。
「背中が丸まるエラー」を防ぐため
回数を10回以上重ねると、セット終盤で姿勢保持筋(脊柱起立筋など)が疲労し、どうしても背中が丸まりやすくなります。
これはバーベル種目全般に言えると思います。
背中が丸まったり、反動で上半身を反らせて無理やり扱えない重量を挙げたりしていると、脳と体にその「悪いフォーム」を記憶させることになります。
この悪いフォームを身につけてしまうと、自転車に乗った際に意図せず出てきてしまうので注意が必要です。
「ウエイトをやると感じが悪くなる」という人は、こういうのが原因かもしれませんね。
完璧なフォーム(胸椎伸展・肩甲骨固定)を1ミリも崩さずに引き切れる回数が、この4〜6回なのです。
まとめ
ペンドレイロウの目的は、単に背中の筋肉を大きくすることではありません。
ハンドルを引く力そのものを強化するのが目的です。
次回のトレーニングから、ぜひ取り入れてみてください!


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