ワット数は高いのにハロンで勝てない?「パワー=速さ」の勘違い

「Wattbikeで1600W出たのに、200mFDでは、1200Wしか出ない後輩にタイムで負けた。」

「パワーはあるから重いギアは得意だけど、軽いギアで高回転になると弱くなってしまう。」

こんな経験をしたことはありませんか?

こんにちは!にいやんです!

私も自転車競技が3年目になりますが、実際に1500W出る人が、1200Wの人にハロンで負けるシーンを何度も見たことがあります。

Wattbikeの最大ワットが高いのは間違いなく大きな武器なのですが、それだけが自転車の速さを決める要素ではありません。

今回は、なぜ高いワットが出るのにも関わらず、自分よりワットが低い人より速く走れないのか、そしてあなたの高いワットを無駄なく「ハロンのトップスピード(推進力)」に変換するための方法を私なりに解説しようと思います。

この記事を読むことで、「パワーロスを防ぎ、持っているワットで最大限のタイムを叩き出す具体的な方法」がわかりますよ!

目次

下に踏む力は推進力にならない

パワーメーターは、ペダルに加えられた力の「総量」をワットとして表示します。

しかし、その力のすべてが「自転車を前に進める力」になっているとは限りません。

ペダルが一番下(6時の位置:下死点)に向かおうとしているときに、真下に向かって体重を乗せて全力で踏みつけると、パワーメーターの数値は一瞬跳ね上がります。

ちなみに、ワットバイクで最大ワットを出したいときも、下死点までぶち抜くつもりで踏み込みます。(実走では大ギアでのゼロスタートでぐらいでしか生きる場面がないですけど。)

しかし、下死点に向かっていくら力をかけてもクランクは回らないため、実際の推進力は「ゼロ」です。

ロードバイクなら100歩譲ってまだいいですよ、下死点まで踏んでも。

下死点まで踏んでも進む力にはならないんですけど、フリーギアなので脚が疲れるだけで済みます。

問題は、ピストバイク。

固定ギアなので、クランクは回り続けます。

ペダルは6時の位置に来たら、当然ですが7時、8時、9時とクランクは移動しようとします。

しかし、下死点まで踏み抜いてしまうと、6時で下に踏みつける力が働くので、7時に移動しようとするクランクを押さえつけて自らブレーキをかけることになります。

これを「バックを踏む」と言います。

ワット数は高いのに遅い選手は、この「無駄な縦踏み」をしているケースがに多いと考えられます。

その自慢のパワーで自らブレーキをかけながら自転車を漕いでいるんです。

例えるなら、ママチャリでブレーキをかけながら「全力で漕いでるのに自転車が全然進まない!」と言っているのと同じです。

具体的な解決策①:3本ローラーで踏まないペダリングを身につける

3本ローラーで縦踏みにならないように、意識しながらクランクを回しましょう。

もがいたときにお尻が跳ねたら縦踏みが入っている可能性が高いです。

また、もがいときにチェーンが暴れている場合も縦踏みが入っています。

動画を撮影して、確認してみることが大事です。

ちなみに私は、競輪選手の方に、「丸太を転がすように」と教えてもらいました。

具体的な解決策②:Wattbikeの「Polar View」でピーナッツ型を目指す

自転車を前に進める推進力(トルク)が最も効率よく伝わるのは、ペダルが「1時から3時」の位置にある瞬間です。

この感覚を身につける最も有効な練習が、Wattbikeのモニターに表示される「Polar View(ペダリング軌道)」の活用です。

下に踏み潰している選手は、この図形が「8の字(雪だるま型)」になっています。

これは3時を過ぎてから下死点に向けて力が最大化し、引き足が遅れて抵抗を生んでいる証拠です。

改善のために必要なのは、この図形を「ピーナッツ型」や「楕円型(ソーセージ型)」に近づけることです。

1時ですぐに股関節の伸展(お尻の筋肉)を使って斜め前に蹴り出し、4時を過ぎたらすでに踏むのをやめて足の重さを消す(すばやく引き上げる)意識を持ちます。

ちなみに私は、10時頃からペダルを捉える準備をしています。

綺麗なピーナッツ型を保ったまま、ワット数を上げる練習を繰り返せば、あなたの高いワット数は「推進力」へと変換されます。

具体的な解決策③:乗り込み

最終手段です。乗り込みをしましょう。

筋肉繊維が遅筋化しちゃうとかそんなの気にしてる場合ではありません。

踏まないように意識しながら乗り込んでください。

それでも踏んでると思います。

100km、200kmと乗り込んでいると踏むのも限界がきます。

疲労困憊でどう漕いだら楽に家まで帰れるか試行錯誤しながら自転車に乗る中で、ようやく私は理解できました。

もちろん、先に紹介した3本ローラー練や、ワットバイクのモニターでペダリングを確認する練習をしながらですよ。

3本ローラーで回す感覚を得たら、それがあっているのでワットバイクのモニターで確認して答え合わせをする。あとは、それを乗り込みで意識する。

空気抵抗が悪いとパワーがあっても遅い

パワーがあるの実走になると人より遅い。

もしかしたら、空気抵抗をもろに受けるフォームになっていませんか?

自転車が前に進むのを邪魔する抵抗のうち、時速40kmを超えると約80%、ハロンのような時速60km以上の世界では90%以上が「空気抵抗」になります。

スポーツ科学において、空気抵抗(抗力)は以下の流体力学の公式で計算されます。覚えなくていいです。ようは速い速度で走れば走るほど、より空気抵抗の少ないフォームで走ることが大事ということです。

Fd = 1/2 × ρ × v² × CdA
Fd:空気抵抗
ρ(ロー):空気の密度
v:速度
CdA:空気抵抗係数 × 前面投影面積

ここで最も重要なのが「CdA(前面投影面積)」です。ようは、正面から見たときに風を受ける面積のことです。

頭が上がったり、上半身が起きているほど、この前面投影面積が大きくなります。

いくらペダルを1500Wで力任せに踏み込んでも、もがく際にハンドルを強く引こうとするあまり背中が丸まって上体が起き上がっていたり、肩幅が広がるようなフォーム(前面投影面積が大きい状態)になっていたり、頭が高くなるフォームで乗っていれば、空気を無駄にかき混ぜてしまい、速度が落ちます。

解決策:固定ローラーと動画撮影を使ったフォーム矯正

大会でトップレベルの人達を見ると一目瞭然ですが、頭の位置が低く、背中がフラット(またはコンパクトな丸み)に保たれ、肩がすぼまっています。

これを身につけるため、固定ローラーの横(または斜め前)にスマートフォンを設置し、もがいている自分のフォームを録画して客観視してください。

そして、フォームを直そうとする意識を持ちながら乗り続けることが重要です。

一番力が入る瞬間に、無意識に頭が上がって前面投影面積が広がっていませんか?

ステムを長くしたり、ハンドル幅をナローにするなどの機材面の工夫と併せて、このフォーム矯正を行う方が「100Wパワーを上げる努力」よりも圧倒的にハロンのタイム短縮に直結するはずです。

最大パワーが大きくても体重比が良くないと遅い

体重が増えれば、筋肉量も増えるため当然最大パワーは上がります。 なんなら脂肪だけでも増えればワットは伸びます。

しかし、体重は自転車競技において、プラスにもマイナスにも働きます。

物理学(ニュートンの運動方程式)では、加速力は以下の式で決まります。 覚えなくていいです。「へー」ぐらいで構いません。

a = F ÷ m (加速度 = 力 ÷ 質量)

つまり、ハロンの駆け下ろしや1000mTTのゼロスタートで大きな加速力(a)を得るためには、大きなトルク(F)をかけると同時に、質量(m:体重+車体重量)が分母にあることを忘れてはいけません。

体重が重い分、軽い選手と同じ速度に到達するには、彼らを大幅に上回る絶対的なパワーが必要になります。

体重70kgでMAX1400wの人と、体重80kgでMAX1600wの人はワットだけ見れば同レベル。

空気抵抗や体の燃費的なことを考慮すると、むしろ70kg1400wの方が有利とすら思えます。(個人の感想です。)

一応、フォローしておくと体重が重いと慣性の法則で有利なので、一度スピードに乗ったら有利ですし、風が強い日でも煽られにくいです。(でも、体重があるとタイヤ抵抗も増えちゃう。)カーボンならまだしも、クロモリだとフレームが無駄にしなってパワーロスもしますね。

ハロンなら動いているところからの加速なのでまだいいのですが、1000mTTのゼロスタートや低速からのダッシュでは、この重さが大きなデメリットになります。

ようは無駄な脂肪で体がでかいなら減らしましょう、筋肉ででかいならそのまま筋力をさらに伸ばしましょう!ってことです。

さらに潜む体重増加のデメリット:機材の抵抗とロス

さっきもチラッと触れましたが、改めて体重増加のデメリットについてお伝えします。

体重が重いことのデメリットは、加速の鈍さだけではありません。

物理的な「機材への負担」がタイムを削り取ります。

タイヤの転がり抵抗の増加

体重が重いとタイヤが地面に押し付けられて変形(潰れ)が大きくなります。

タイヤが潰れると「転がり抵抗(ヒステリシスロス)」が大幅に増加し、バンクでの高速域ではこれが無視できないパワーロスを生みます。

フレームの「たわみ」によるパワーロス(クロモリ限定)

踏み込んだ際の莫大なパワーと重い体重を受け止めるフレームにも限界があります。

しなりを活かすクロモリフレームの場合、体重が重すぎるとフレームが剛性負けしてしまい、力が逃げて推進力に変わりません。

カーボンフレームのような高剛性素材であれば耐えられますが、それでも限界を超えれば多少のねじれが生じ、ペダリングの力が100%推進力にならなくなってしまいます。

解決策:筋力特化のウエイトと「リコンプ」による減量

ワット数は高いのに体重が原因でタイムが出ない場合、アプローチは2つです。

体重を増やさずに「絶対筋力」を上げる

筋肥大ではなく、1RMの85〜95%といった高重量・低回数のスクワット等で神経系を鍛え、今ある筋肉でより大きなトルクを出せるようにします。

スクワット100kg1発が限界の人は、85kgから95kgで2~5回を3セットやりましょう。

「リコンプ」を意識した減量

体脂肪が多い人ならラッキーです。まだまだ成長する伸び代が大きく残っています。おそらくパワーがあるのに遅い人の大半がこのパターンなのではないでしょうか。

筋肉やパワーを落とさずに体脂肪だけを削る「リコンポジション(リコンプ)」を行います。

高タンパクな食事と強度の高いウエイトを維持し、アンダーカロリーで「重り」となる脂肪だけを削ぎ落としてください。

ただ、リコンプってちゃんとした食事管理をしないと成り立たないので、やってみたいと思う方はググってみるか、チャッピーに聞いてください(笑)

無理だと思ったら、先に減量から始めましょう。

回転数(ケイデンス)と筋収縮速度のズレ

パワー(P)は、物理学的に以下の式で成り立っています。 ここも覚えなくていいです。

P = τ × ω (パワー = トルク「筋力」× ケイデンス「速さ」)

例えると、筋力は単にスクワットのMAXが何キロ上がるか。速さとは、スクワットでバーベルを持ち上げる速さ。

スクワットMAX100kgでも、1秒で挙げられる人と3秒で挙げられる人とでは、前者の方がパワーがあります。

あなたがパワーがあると思っているのは勘違いで、実は筋力があるだけで速さのレベルが低い可能性があります。

重いギアを力任せにゆっくり踏めば、高いトルク(τ)が発生し、ワット数は高く出ます。

しかし、ハロンでトップスピードに乗せるには、130rpm〜150rpmという超高回転(ω)で回し切る神経系の能力が必要です。

「いやいや、私は超重いギアしか使わないから」という人もいるかもしれませんね。

でもこんな経験ありませんか?

Wattbikeである程度までは負荷を上げた分だけワット数が上がるけど、ある程度のところで逆に最大ワットが落ちてしまう。

パワー(生み出されるエネルギー)は、筋力×速度の値です。

ですので、重ギア一辺倒だと、いつか必ず限界がやってきます。

高回転で速度も鍛えてください。

Wattbikeでは重い負荷をかけて最大パワーを出せるのに、実際のバンク(49-15などの決まったギア比)ではペダルがスカスカに感じて力が入りきらない。

これは「筋力が足りない」のではなく、「筋肉がその速いスピードで収縮することに慣れていない(神経系の未発達)」ことが原因です。

解決策:神経系特化のオーバースピードトレーニング

高回転でも荷重が抜けないようにする神経系トレーニングが必要です。

下り坂を利用したオーバースピードトレーニングや、固定ローラーでのハイケイデンス(180rpm〜200rpm)もがきなど、「軽い負荷で超高速に筋肉を動かす」練習を取り入れ、高いワット数を高回転域でも発揮できるように脳と筋肉をリンクさせましょう。

Aragoの電動3本ローラーで自分では出せない回転数を脳や筋肉に覚えさせるのも効果的です。30万円以上するので、持っている人は少ないと思いますが、メルカリやヤフオクなどでたまに見つかります。

あとは、ウエイトリフティング系種目やジャンプ系種目など、瞬発力を鍛える種目もありますので検討してみてください。

まとめ:あなたのワット数は、もっとタイムに繋がる

ワットが高いということは、それだけポテンシャルを秘めているということです。

才能と努力の成果であり、自信を持っていい部分です。

あとは、その巨大なパワーを正しく自転車に伝えるだけです。

この記事で紹介したことを1つでもいいので試してみてください。

今回は以上です。

最後まで読んだいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

トラック競技(短距離)が好きです。ロードバイクはゆるぽたが好きです。筋トレは自転車のためが半分、ボディメイク的要素が半分。

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